花火大会の雑踏で事故に遭わないために

 2001年7月、兵庫県明石市で開催された花火大会で、終了後の連絡歩道橋上で雑踏の中、子供や高齢者が10名以上亡くなり、100名以上の重軽傷者を出したことはなんとも痛ましい事故でした。
 このような事故は大勢の観覧客が押し寄せる花火大会では全国何処でも、人ごとではありません。何か起きたときの責任の所在や、賠償や憤懣の持っていき先も曖昧になりがちです。
 明石の様なケースで、気が付いたら歩道橋の上に押し出されていた、という場合に何か起きたら、もはや逃げ道は無いといえます。また、個人や数人のグループの力では、それ以上の群衆による圧力を跳ね返すことも、そこから脱することも難しいと思います。雑踏に巻き込まれない、みすみす身を投じないことが、事故やけがの予防の第一歩といえるでしょう。
 こちらではWebマスターの花火観覧10年以上の経験から、思い当たる観覧客自身が身を守るための雑踏事故予防策を箇条書きにしてみました。なお「立ち入り禁止区域に入らない」などの基本的かつ幼稚な注意は除外した。(一部「花火大会に出かけよう」の項目や文章との重複もあります。)

●混雑する花火大会の条件
 
・基本的に東京や大阪など大都市圏の花火大会。
・情報誌、口コミなどで人気がある、誰でも知っている有名な花火大会。
・イベントなどで突発的に開催される花火大会(カウントダウンやコンサートがらみなど、開催実経験が無いため主催者も観覧客も免疫が無く危険度大)、または開催歴が浅くインフラを含めた運営が成熟していない大会。
・主たる交通機関が鉄道に限られ最寄り駅から会場が近い(駅周辺、駅構内で大混雑発生)。
・主たる交通機関が鉄道に限られ最寄り駅が一つしかない(駅周辺、駅構内で大混雑発生)。
・花火会場(観覧場所)が規制により限られれているか、または見る場所が基本的に狭い場所。
・開催場所近辺に至る道が少なく、かつ道幅が狭い。土手上通路などが狭い。
・その花火終了後は帰るだけしかすることがないような(寄り道スポットが無い)へんぴな場所での開催。
●要注意である花火会場周辺の特殊な条件
 
 基本的に人出が多いだけでは、事故にはならない。事故を呼ぶ地理的、場所的、物理的要素もある。
 
・一般に知られている最寄り駅やそこまでの帰り道ルートがひとつしかない。しかも行き帰りのどちらの客も同じ道、場所を通らなければならない(明石の例)。
・河川敷や海岸などに下りるまたは上がる道や階段、帰路の道路に出るための道(トンネルなど)の場所や数が少ない、狭い、あるいは構造的な欠陥により通行量が限られている(明石の例)。
・橋や一つしかない歩道橋などを渡らないと駅や観覧場所に行かれない(明石の例)。
・駅前などに交通量の多い幹線道路があるため歩道橋や連絡地下通路を通らなければならない。
・駅のホームに至るために、跨線橋や地下通路を通らなければならない。
●基本は早めに出かけ、ゆっくり時間差で帰る。無計画に花火会場に行かない。

 明石の様な事故で、Webマスターが残念思い、理解できないのは、
「何故、花火打上が始まっている様な時間帯に、駅から会場へという最も混雑している所に子供連れで居たのか?
 何故、花火がまだ終わっていない時間帯にあの場所を抜けて帰ろうとしたのか?」
 という点である。もし開始のずっと前に、砂浜に観覧場所を求め、全てが終了してからゆっくり帰ればあのような事態には遭遇しなかったはずである。
 歩道橋上で難に遭遇した方々は、あまりに無計画に思いつきで花火観覧に出かけてしまったと残念でならない。
 早め、の時間的定義は難しいが、少なくとも打上開始の3時間前以上。間違っても「そろそろ暗くなって花火を観る気分」などという時間に会場や最寄り駅に到着してはいけない。打上開始前の最大混雑ピークタイムは1時間30分前から開始までの1時間余りの直前タイムだ。この時間帯では最寄り駅、会場周辺道路、会場全てが激しく混む。
 また花火終了後に、たとえば最寄り駅が混まないうちに早く観覧場所を離れたい気持ちは誰もが同じ。そこで群衆の流れを妨げるような箇所で、大混雑が発生してしまう。
 できるなら、終了後まず1時間は観覧場所を動かない方が賢明である。その花火大会の効果的な脱出ルートを熟知した地元客はこの限りではないが、最近は情報誌を片手に、気軽に生活圏以外の花火大会に出かける観覧客も多い、こうした場合はとにかく人がまばらになるのを待ってから帰りたい。自身の観覧場所自体が席を立つ客が殺到するような場所(川の花火大会での土手斜面など)では、人が空いた方へいったん場所を移すことも大切。
 だからとくに終了後の時間的余裕をみて観覧計画を立てることが肝心だ。
 もしその花火大会の開催地の地元民でなければ、情報誌などで開催日程や場所を知るだけでなく、どうやって出かけ、どういうルートで帰るか?に至るまできちんと計画を立ててでかけることが大切。

●その他注意事項

・帰りの切符などは予め買っておく、到着時すでに帰りの切符を買うために券売機前が混雑している場合もあるので、イオカード、メトロカード、回数券などを買っておく。
・明るいうちに到着し、道順をよく把握する。観覧場所では全体を見渡し、通路となる場所や夜店やトイレを中心とした人の流れに注意しておく。
・最寄り駅では遠回りしても反対口から入ることも考える。
・遠い、あるいは遠回りと思われる帰りルートをわざと選ぶ。
 早めの出動なら問題ないが、帰りはひとつ先か手前の駅まで歩く、遠いまたは不便と思われる方の駅を選ぶ。
・何も考えずに人の流れに乗らないこと。
 道が分からないのでなんとなくみんなが行く方に付いて行く、これは危険。おしゃべりして、誰かの後について歩くうちに身動きもままならない雑踏の中ということもある。帰りルートなどは自分で予め選んだ道を通らなければならない。
・民間の警備員、ガードマンの誘導、禁止の指示を鵜呑みにせず、自分の頭で最善の方法を考えること。
 こうした民間の警備員には、警察官や消防署員のような絶対の権限も決定権も基本的には無いし、指示された範囲の警備行動しかしない。自分と自分の身内の身は自身で守ると考えること。それは何か事に巻き込まれたときのサバイバルではなく、事前に回避する、近づかない、ことを考えるということ。

●子供連れの場合
 
・乳幼児連れ、或いは妊産婦は花火会場での観覧は避けた方が無難。どうしてもという場合は、電車など公共交通機関を避けマイカーを利用する。その上でメイン会場から離れたところや、指定駐車場などで観覧する。花火会場付近には早めに到着し、終了30分以上前に切り上げる。メイン会場近辺ではベビーカーなどは使わないし使えないと考える。
・徒歩の場合、夜店などがある混雑ルートは通らない。
・混雑時間、混雑箇所を考え、早めの行動、迂回ルート、メイン観覧場所を外す、充分空いてから帰るなどの対応をする。子連れでは絶対に混雑ピークタイム、または打上が始まってからのメイン観覧場所や最寄り駅への接近をしてはならない。
  
参照→「日本の花火」花火大会全般FAQ 内、子供連れ観覧で注意することは?
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