地球温暖化による海面上昇計算
(Excelを用いた地球温暖化計算)

Excelを用いた科学技術計算が第2版になりました 30年10月

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海水の熱膨張による海面上昇率のグラフ

理科年表 平成25年



 近頃、地球温暖化による海面上昇が問題になっているが、温暖化により北極の氷がとけるたり、海水の熱膨張により海面が上昇し、陸地が水没(ツバル水没)するなど、定性的な話に終始している。海面上昇が嘘かほんとうかを検証するため、ここでは、定量的に海面上昇が何mかを計算する。


                            

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海面に浮かぶ氷がとけても海面は上昇しない


             図1 海面に浮かぶ氷山


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 図1のように、氷は海水より軽い(比重が小さい)ため、氷は海面に浮かんでいる。
体積(V)の氷の比重を(γi)とすると、その重量(G)は(1)式となる。

 G = γi・V   ・・・ (1)

この氷がとけて水となってもその重量(G)は変化しない。(質量不変の法則)
とけた水の体積を(Vw)、その比重を(γw)とすると、(2)式が成立する。

 G = γw・Vw  ・・・ (2)

水中の物体は、その物体がおしのけた水の重量だけ軽くなる。(アルキメデスの原理)
(アルキメデスの原理は小学校の理科で学習しますね。)
氷の水没している部分の体積を(Vu)とすると、氷に働く浮力(F)は(3)式となる。

 F = γw・Vu  ・・・ (3)

力のつり合いの法則より、(氷の重量=氷に働く浮力)が成立する。

 G = F   ・・・ (4)

(2)(3)式を(4)式に代入すると、(5)式が成立する。

 Vw = Vu  ・・・ (5)

(5)式は、氷がおしのけた水の体積はとけた氷の体積に等しいという意味である。
よって、海面に浮かぶ氷がとけても海面上昇はありえない。

ただし、海水の比重(1.02程度)は真水の比重(1)よりわずかに大きいがこれを無視する。



陸上の氷がすべてとけた時の海面上昇は37.5m


 北極海の氷がとけても、海面は上昇しない。(北極グマは絶滅するかもしれませんが)南極大陸、グリーンランド、ヒマラヤ、アルプス等の陸上の氷がとけて、海に流出すると海面上昇が発生する。
陸上の氷に覆われた地域の面積(Si)は陸地の11%程度である。(参考資料 理科年表)

氷の平均厚(Di)を1km(1000m)と仮定する。純氷の比重は0.917だが、陸上の氷は積雪が圧縮されたものであるから空気が混在している。そこで、その比重(σi)を0.83と仮定する。
陸上の氷がすべてとけた時の水の量(Vw)は(6)式となる。

 Vw = Si・Di・σi ・・・ (6)

地球上の全海洋面積をSs=362033000Km2とすると、陸上の氷がすべてとけ、海洋に流出した時の海面上昇高さ(H)は(7)式となる。

 H = Vw/Ss ・・・ (7)

図2の様に、エクセルを用い海面上昇高さを計算すると、約37.5mとなった。


   図2 エクセルを用いた陸上の氷がとけた時の海面上昇高さ計算



海水の熱膨張による海面上昇


図3 水の密度の温度変化 (参照 理科年表)


 通常の液体や固体は温度上昇により熱膨張する。図3のように水には特殊な性質があり、1気圧のもとにおける水の密度は3.98℃において最大である。すなわち、0〜3.98℃では水は温度上昇により縮小する。水の熱膨張率は小さな値であるが、海洋の平均水深(D)は3729m(参照:理科年表)と意外に深いため、海水の熱膨張は海面上昇の大きな要因の1つになる。そこで、各温度において海水温が1℃上昇した時の海面上昇率(Hs)を計算する。計算式は次式となる。

 Dσt = (D+Hs)σt+1 より

 Hs(海面上昇率) = (σtt+1- 1)・D  ・・・ (8)

           σt   :温度tにおける水の密度
           σt+1 :温度t+1における水の密度

 図4のように、エクセルを用い海水の熱膨張による海面上昇率を計算した。13℃の海水温度が1℃上昇する場合、約50cmの海面上昇高さとなり、かなり大きな値となる。毎年、50cmもの海面高さ変化が報道されていないところをみると、海水の平均温度は一定に保たれているようである。陸上からの水、海流などの影響でローカルな海水温の変化があるとおもうが、平均温度は一定である。海上の氷が、海水の平均温度を一定に保つ機能を持っているのかも知れない。


図4 エクセルを用いた海水の熱膨張による海面上昇率計算


              図5 海水の熱膨張による海面上昇率のグラフ



大気中の水蒸気増加による海面下降


 大気の温度が上昇すると、大気の飽和水蒸気量が増加し、大気に含まれる水(水蒸気)の量が増加する。増加する水蒸気は海水が蒸発したものと仮定すると、海面は下降する。海面下降の要因も計算する必要がある。



飽和水蒸気圧


図6 飽和水蒸気圧の温度変化グラフ


 図6の様に、温度の増加に伴い空気中の飽和水蒸気圧は増加する。この飽和蒸気圧を超える水蒸気は過飽和となり不安定な状態となる。飽和蒸気圧 E(t) (hPa) の計算にはテテンの実験式(次式)がよく用いられる。

  E(t)=6.11×10(7.5t/(t+237.3))  ・・・ (1)

               t : 温度(℃)



飽和水蒸気量


図7 飽和水蒸気量の温度変化グラフ


 体積1m3の空間に含まれる飽和水蒸気の質量(g)を飽和水蒸気量という。相対湿度(%)は水蒸気量と飽和水蒸量の比である。理想気体の状態方程式により飽和水蒸気量は計算できる。



理想気体の状態方程式


 水蒸気は理想気体と考えられ、次の理想気体の状態方程式に従う。

  PV = nRT   ・・・ (2)

      P:気体の圧力(Pa)
      V:気体の体積(m3)
      n:物質量(mol)
      R:気体定数(J/(K・mol)) = 8.31447
      T:絶対温度(K)
      絶対温度(K) = セ氏温度(℃) + 273.15


状態方程式は次の2法則を一体化したものである。

(a) ボイル・シャルルの法則
 
  気体の体積(V)は圧力(P)に反比例し、絶対温度(T)に比例する。

(b) アボガドロの法則

  温度(T)・圧力(P)が一定のもとで、気体の体積(V)は物質量(n)に比例する。


 (2)式の状態方程式より体積(V)が1m3の空間に含まれる物質量n(mol)は次式となる。

  n = P/(RT) ・・・ (3)

 水(H2O)1molは18gである。このことより、飽和水蒸気量(g/m3)が算出できる。



エクセルを用いた飽和水蒸気圧と飽和水蒸気量の計算


 図8の様に、テテンの実験式と状態方程式に基づき、飽和水蒸気圧と飽和水蒸気量を計算した。


  図 8 エクセルを用いた飽和水蒸気圧と飽和水蒸気量の計算



大気中の水蒸気増加による海面下降計算


(a) 大気中の水蒸気量の増分
 
 大気は緯度、高度、季節、時間等により温度が異なるが、ここではラフな計算をしたい。大気の平均温度を15℃、相対湿度50%と仮定し、温度が1℃上昇したときの水蒸気量の増分を次式で計算する。

 水蒸気量の増分(g/m3) = (相対湿度/100)×(16℃の飽和水蒸気量 - 15℃の飽和水蒸気量)

(b) 大気の体積計算

 地球の表面積は約509,950,000km2である。水蒸気は地上20Kmまで存在すると仮定し、大気の高さを設定する。

  大気の体積(km3) = 大気の高さ×地球の表面積

(c) 大気全体の水蒸気量の増分

 大気全体の水蒸気量の増分(g) = 水蒸気量の増分(g/m3) ×大気の体積(km3)×10003

 水蒸気1gを水の体積に換算すると1cm3となり、海水が蒸発した水の体積が計算できる。

(d) 海面下降高さ計算
 
地球上の全海洋面積を362033000Km2とすると海面下降高さは次式となる。

 海面下降高さ = 海水が蒸発した水の体積/海洋の面積


図9のように、エクセルを用い海面下降高さを計算したが、それは僅か1.1cmであった。


     図9 エクセルを用いた海水蒸発による海面下降計算



海水温上昇、氷の融解に必要な熱エネルギーの計算


 これまでの計算で、地上の氷がとけたり、海水の熱膨張によって大きな海面上昇が起こることがわかった。しかし、海水や氷と比較して、大気はあたためやすくさめやすい。海水や氷の温度を1℃上昇させるためには膨大な熱エネルギーが必要となる。また、氷をとかすには膨大な融解熱が必要である。そこで地球上の海水、氷、大気の熱容量、融解熱を計算し、比較検討する必要がある。

 熱容量:ある物体の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギーを熱容量という。

 融解熱:0℃の氷1gをとかすためには80カロリーもの融解熱が必要である。ちなみに、1gの水を1℃上昇させるのに必要な熱量は1カロリーである。



地球上の海水、氷、大気の熱容量、融解熱計算(地球温暖化計算)


図10 エクセルを用いた地球上の海水、氷、大気の熱容量の比較計算


 図10の計算結果で、海水の熱容量は大気の熱容量の1000倍以上あることがわかる。大気温度を1℃上昇させるに必要な熱エネルギーでは海水温は0.001℃しか上昇しない。大気温度を1000℃上昇させる熱エネルギーがあってやっと海水温を1℃上げられる。氷の熱容量は大気の熱容量の5倍程度だが、氷がとけるために必要な熱エネルギーは大気の熱容量の850倍である。陸上の氷の計算だけでこの倍数であるが、北極海や南極の棚氷分の熱容量、融解熱を加算するとさらに倍近く増加すると思われる。大気中の温室効果ガス(二酸化炭素(CO2、水蒸気)の影響で大気温度が数℃上昇することは考えられても、海水温度が数℃上昇することや、氷がとけることは考えにくい。温室効果ガスが大気に蓄積する熱エネルギーを計算してみる必要がある。

 地球温暖化による海面上昇で人類が溺れる以前に、大気温度上昇(高熱化)により人類は滅亡するため、海面上昇はあまり気にすることはないと思われる。


参照文献
理科年表 平成25年

Excelを用いた地球温暖化計算


現状の二酸化炭素濃度を370ppmとしたときの濃度と大気温度変化のグラフ


福島原発事故シミュレーション





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(Yahoo Japan 掲載)


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