脳寄与進化説† |
本稿では,「脳寄与進化説」を新たに提唱する. 生物がかくも高度で精緻な体と機能を獲得できたのはなぜであろうか? 従来の進化論では,突然変異と自然淘汰によるという説明が主流であった.しかし,驚くほど環境によく適応した体と機能をもっている生命の構造や行動は不思議であった.また,高等生物が短期間に環境に合った進化ができるのも不思議であった. 本稿が提唱する「脳寄与進化第1仮説」は, 「生物の脳が獲得した情報や,脳で演算や生成を行った情報は生殖細胞のDNAに伝達して子孫に遺伝し,これにより進化が促進されている」 という仮説である. さらに,「脳寄与進化第2仮説」は, 「進化のための演算(すなわち,遺伝子情報の設計,実装,評価,試行錯誤)が脳で行われている」 という仮説である. これらの仮説がもし正しければ,上述の,環境に非常に合致した生物の体や機能,そして進化の速さが,よりよく説明されると考える. この仮説が今後の観察・実験で検証されることを期待したい. |
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