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執筆中
脳寄与進化説†
園部研究室
園部 正幸
概 要
本稿では,「脳寄与進化説」を新たに提唱する.
生物がかくも高度で精緻な体と機能を獲得できたのはなぜであろうか? 従来の進化論では,突然変異と自然淘汰によるという説明が主流であった.しかし,驚くほど環境によく適応した体と機能をもっている生命の構造や行動は不思議であった.また,高等生物が短期間に環境に合った進化ができるのも不思議であった.
本稿が提唱する「脳寄与進化第1仮説」は,
「生物の脳が獲得した情報や,脳で演算や生成を行った情報は生殖細胞のDNAに伝達して子孫に遺伝し,これにより進化が促進されている」
という仮説である.
さらに,「脳寄与進化第2仮説」は,
「進化のための演算(すなわち,遺伝子情報の設計,実装,評価,試行錯誤)が脳で行われている」
という仮説である.
これらの仮説がもし正しければ,上述の,環境に非常に合致した生物の体や機能,そして進化の速さが,よりよく説明されると考える.
この仮説が今後の観察・実験で検証されることを期待したい.
† Brain-Contributed Evolution Theory, by Masayuki SONOBE, Sonobe Laboratory, Japan
1.はじめに
2.従来の進化論とその問題点
ダーウィンの進化説は,自然淘汰と生存競争によって適者生存が起こるとする.
ラ・マルクの「用不用説」,獲得形質遺伝の法則
よく使う器官は発達し使わない器官は消失するという「用不用説」と、用不用の原理によって変化した形質は次世代に伝わるという「獲得形質遺伝の法則」である。 ド・フリースの「突然変異説」
シンプソンらの「総合進化説」
木村資生の中立進化説
この生体に変異を及ぼさない同義的コドンの変異が蓄積し、ある時(木村教授は生物がリラックスした時と表現している)、それが進化に優位な変異に発展するかも知れないとするのが分子進化の中立説である
ナイルズ・エルドリッジと,スティーヴン・ジェイ・グールド「断続平衡説」
今西進化論
中原英臣らの「ウイルス進化説」
ドーキンスの「利己的遺伝子」
3.脳寄与進化第1仮説
4.脳寄与進化第2仮説
5.未知のメカニズムの考察
6.おわりに
生物では脳が見て聞いて考え,あるいは無意識に演算されていることが進化に寄与しているのではないか,という「脳寄与進化説」のふたつの仮説を新たに提示した.
本仮説によれば,環境に非常に合致した生物の体や機能,そして進化の速さが,よりよく説明できると考える.
今後,本仮説を支持するような未知のメカニズムが発見されることが待たれる.
また,たとえ仮に,現在の地球上の生物がこのメカニズムをもっていないとしても,未来の高度に進化した生物が,このメカニズムを獲得することもありうるのではないか.
参考文献
[1] 真名井文彦:進化論の嘘
[2]Benjamin Lewin: Genes VI, Oxford University Press and Cell Press (1977) ── 菊池 韶彦ら訳:遺伝子 第6版,東京化学同人(1999).
【ご注意】
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