五月の肌寒い宵、私は風を避けて,駅の構内で電車を待っていました. すると近くで突然「バッコーン!!」という凄まじい音.私は危険を感じて身がすくんでしまいました. 私の見ていた真ん前で,天井から板が床に落ちてきたかと思うと、なんと、一緒に白い猫が落ちてきて駆け出すのが見えました. その猫は恐怖極まった表情で,猛スピードで構内を駆け回って出口を探していましたが、落ちてから3秒後には,もう自動改札をくぐって広場に飛び出していました.定期券も見せずに……. 周りの人達は皆しばらくあっけにとられて、天井にぽっかり空いた穴と猫の行方を見つめていました. 落下した板を改めて見てみると,一辺約40センチの正方形で,重量もありそうでした.万一,人に当たれば,大怪我をする可能性もありました. でも、幸い1メートル以内に人はいませんでした.私も助かってピンピンしています. どこかの穴からはいった猫が,間違って天井裏まで入り込んでしまったのでしょう. 暗闇で出口が分からずパニックになって、相当長時間暴れているうちに、普通の力でははずれない天井板を蹴り落としてしまったのでしょうか. パニックになった猫は可哀相ですけれど、幸い板の上から落ちてきたので怪我はなかったようです.飢え死にも免れました。 でも、人や猫にこれ以上危険なことがないように、天井板の安全性を点検するだけでなく,穴を探して猫のいないときに塞いでいただければ安心できると思いました. この写真は“事故”の数分後に,デジカメをもっているのをようやく思い出した私が撮った現場の写真です. 写真の中の「白猫」と「板」はもうなくて,記憶から再現して計算機で描いたものです. 余談ですが,この写真は,ある新聞の地方版に掲載されました. さっそく再発防止策をとってくださる,という駅長さんのお詫びの談話も載っていて,ありがたく思いました. ただ,新聞写真はありのままでなければいけないらしく,この写真は使えません.代わりに,白猫も板もないオリジナルの写真を提供しました. その後,この天井は補強され,落ちた板は点検口に改造されました. CATS(Common Automatic Transport System,公衆自動搬送システム)を研究している私の前に,白い猫(cat)が意外な形で姿を見せたのも,何かの吉兆でしょう.
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